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2012年6月30日(土)
環境エネルギー政策研究所 自然エネルギー情報

自然エネルギー世界白書2012 要旨
(環境エネルギー政策研究所による仮訳:2012年6月27日版)

  • 本ペーパーは要旨部分の仮訳のため、詳細は原典を参照してください。
  • 英語全文はREN21ウェブサイトからダウンロード可能
  • 日本語全文は環境エネルギー政策研究所より2012年秋頃公開予定

■ 概要

自然エネルギーは大きな成長を続け、世界の投資記録を更新した。いくつかの国の政策に不安定さはあったが、価格が低下し政策が広まるにつれ、自然エネルギーは世界中でこれまで以上に拡大している。

自然エネルギーの市場や政策的枠組みは近年急速に発展している。本報告書では、世界の自然エネルギーの市場、産業、投資、政策の動向についての最新かつ包括的な概観を紹介する。世界中の400人以上の協力者や研究者のネットワークが提供した最新のデータを用い、多様な分野の専門家による著者チームがこれをまとめた。本報告書は最近の発展状況や現状とともに主要なトレンドも含めるが、現状の分析や問題点の議論、将来の予測は行わない。
 
そのような特徴を持つため、本報告書や今後の報告書は、自然エネルギー普及の世界的な発展状況を計る基準となりうる。今年は国連の「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」にあたり、自然エネルギーの拡大がとくに大きな関心を集めている。国連事務総長の潘基文(バン・キムン)氏は「すべての人のための持続可能なエネルギー・イニシアティブ(Sustainable Energy for All)」を開始した。このイニシアティブを通じて、2030年までに、「すべての人の近代的なエネルギー・サービスへのアクセス確保」、「エネルギー効率の改善」、「自然エネルギーの利用拡大」の三つの目標を達成するために、国際的な行動を起こそうしている。

■ すべての最終消費部門で自然エネルギーが増加

自然エネルギーは拡大を続け、2010年には世界の最終エネルギー消費の16.7%(推計)を供給した。このうち、近代的な自然エネルギーは8.2%(推計)に増加し、伝統的バイオマスの割合が8.5%(推計)とやや低下した。2011年には、近代的な自然エネルギーが、電力、熱、交通といったすべての最終消費部門で大きく増加を続けた。
 
電力部門では、2011年の世界の新規発電容量208GW(推計)のうち約半分は自然エネルギー由来のものであった。そのうち風力発電は約40%、太陽光発電は約30%、水力発電はほぼ25%であった。2011年末までに、世界全体の自然エネルギー発電容量は1,360GWを超え、2010年より8%増加した。自然エネルギーは世界全体の発電容量(2011年に推計5,360GW)の25%以上となり、世界の発電量の20.3%(推計)を供給した。水力発電以外の自然エネルギー容量は2010年から24%増加し、390GWを超えた。
 
熱部門でも、自然エネルギーが拡大する余地はきわめて大きい。バイオマス熱利用、太陽熱、地中熱利用は、すでに自然エネルギー利用のなかで重要な役割を果たしている。欧州をはじめとして各国で優遇政策を策定したり、自然エネルギー由来の熱利用の状況を計測したりするにつれ、自然エネルギーの熱利用は徐々に拡大している。熱および冷房部門のトレンドには、設備規模の拡大、CHP(コージェネレーション:熱電併給プラント)の利用拡大、地域冷暖房ネットワークへの自然エネルギーの導入、工業用の自然エネルギー熱利用も含まれる。
 
交通部門での自然エネルギー利用には、ガス体や液体のバイオ燃料が用いられている。液体バイオ燃料は世界の道路輸送用燃料の約3%を供給し、交通部門での他の自然エネルギー利用を上回っている。電車や地下鉄に加え、乗用車やオートバイにおいても、少ないながらも自然エネルギー由来の電気を利用するものが増加している。このように、電力を使った交通に自然エネルギーを活用する試みは、限定的ではあるが増加している。
 
太陽光発電は累積の設備容量が毎年平均58%増加しており、2006年末から2011年まで自然エネルギー技術の中でも最も急速に成長していた。CSP(集光型太陽熱発電)は、元々小規模だったところから毎年ほぼ37%の増加を遂げた。風力は毎年26%増加した。太陽熱温水システム、地中熱ヒートポンプシステム、木質ペレットなどの固形バイオマス燃料は需要が急速に成長している。最近の液体バイオ燃料の動向は複雑になっている。2011年にはバイオディーゼル燃料の製造は成長したが、エタノール燃料の製造は2010年と比べて、変わっていないかやや低下した。水力発電と地熱発電は世界で毎年平均2~3%ずつ増加しているが、いくつかの国ではこれらの自然エネルギーが国際平均より大幅に成長している。
 
エネルギー供給に占める自然エネルギーの割合もいくつかの国や地域で急速に伸びている。
 
  • 欧州では、自然エネルギーが2011年の新規発電設備容量の71%以上を占め、発電容量全体の31.1%に増加した。太陽光発電は新規容量の47%を占めた。消費量に占める自然エネルギーの割合も並行して増加しているが、容量の多くは発電量が時々刻々と変動する太陽光発電や風力発電であるため、消費割合の増加が容量の増加に比べて緩やかである。入手可能な最新データによると、2010年の電力消費全体における自然エネルギーの割合は2009年の18.2%から19.8%に増加し、最終エネルギー消費全体における自然エネルギーの割合は2009年の11.5%から12.4%に増加した。
  • ドイツは引き続き自然エネルギー利用において、欧州をはじめ国際社会をけん引している。自然エネルギーのトップユーザーとして、電力、熱、交通など様々な部門での導入を続けている。2011年には自然エネルギーはドイツの最終エネルギー消費全体の12.2%を占め、電力消費の20%(2006年の11.6%から増加)、熱需要の10.4%(6.2%から増加)交通(航空以外)の燃料の5.6%を占めた。
  • 米国では、2011年の新規発電設備容量の39%(推計)を自然エネルギーが占めた。米国の発電量全体に対する水力発電以外の自然エネルギーの割合は2009年の3.7%から4.7%に増加した。2011年には9つの州で水力発電以外の自然エネルギーが電力の10%以上を占め、10年前の2州から増加した。自然エネルギーは2011年に一次エネルギーの11.8%を占め、2010年の10.9%から増加した。
  • 中国の2011年末までの自然エネルギー発電容量は約282GWであり、世界最大であった。その4分の1にあたる70GWは水力発電以外の自然エネルギーであった。新規発電設備容量(90GW)のうち、水力発電を含めると自然エネルギーは3分の1を超えており、水力発電を除いた場合でも5分の1を超えた。
  • いくつかの国や州では2011年に電力需要をまかなう風力発電の割合が2010年よりも高くなった。例として、デンマーク(風力発電によって電力需要の26%をまかなった)、スペイン(15.9%)、ポルトガル(15.6%)が挙げられる。また、ドイツの4つの州では電力需要の46%を風力発電でまかない、オーストラリア南部では需要の20%、米国のサウスダコタ州は22%、アイオワ州では需要の19%を風力発電でまかなった。
 
水力発電以外の自然エネルギー発電容量では、トップ7カ国(中国、米国、ドイツ、スペイン、イタリア、インド、日本)が世界全体の70%を占めた。一人当たりの自然エネルギー導入量に換算すると、ドイツを筆頭に、スペイン、イタリア、米国、日本、中国、インドの順であった。EUは2011年末の時点で世界の水力発電以外の自然エネルギーの発電容量の44%を占め、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)はほぼ26%を占めた。BRICsの割合は近年増加しているが、容量はほぼ全部中国、インド、ブラジルにある。
 
普及状況には地理的な偏りがあるとしても、自然エネルギー技術は新しい市場に参入していると言える。2011年には約50カ国が風力発電設備を設置し、太陽光発電も新しい国や地域に急速に広がっている。東アフリカのリフト・バレーなどは地熱発電で注目を集めており、太陽熱温水器は世界中で2億以上の家庭や多くの公共、商業用施設で使用されている。世界全体では、地中熱への関心が高まっており、近代的バイオマスのエネルギー利用が多くの国や地域で拡大している。
 
2011年の自然エネルギー産業では、設備製造、販売そして設備導入部門などほとんどの技術において成長が見られた。太陽光発電や陸上風力発電では、規模の経済や技術革新によって劇的なコスト削減と低価格化が実現したが、一方では政策支援が不安定であったり、政策支援の削減が行われたりしたという要素もあった。同時に、いくつかの自然エネルギー産業(とくに太陽光発電の製造)は、価格低下、政策支援削減、世界金融危機、さらに国際貿易の緊張といった様々な困難に直面した。とくに伝統的自然エネルギー市場で継続している経済問題や変化を続ける政策環境により、いくつかの産業がより不安定な状況に置かれたり、悲観的な見通しが強くなったりしたため、2011年を通じて新しいプロジェクトの提案が減少した。

■ ダイナミックな政策の展望

2012年はじめまでに、自然エネルギーに関してなんらかの政策目標を掲げた国は少なくとも118カ国に上り、その半数以上が発展途上国であった。これは2010年はじめの109カ国から増加している。各国には長期的な政策の不安定さや不確実性があるとはいえ、自然エネルギーの導入目標や支援政策が、自然エネルギー市場の拡大を促進し続けているのは事実である。
 
自然エネルギー事業への投資を促進する公式の自然エネルギー目標や政策の数は2011年から2012年はじめにかけて増加し続けていたが、以前と比べると採用する割合が低下している。いくつかの国は重要な政策の根本的な見直しをしたため、政策による支援が減少した。政策変更の中には、自然エネルギー技術の成長に合わせて、既存の政策手法を改善したり、以前より高い目標を達成するために行われたものもあるが、緊縮財政政策の結果としての変更もある。
 
政府により実施される支援政策のうち、最も一般的なものは自然エネルギー発電に関する政策である。2012年はじめまでには、少なくとも109カ国はなんらかの自然エネルギー発電促進政策を策定しており、GSR2011で報告した96カ国から増加している。この分野では、固定価格買取制度(FIT)と自然エネルギー割当基準(RPS)が最も広く普及した政策となっている。2012年はじめまで、FITの政策は少なくとも65カ国と27の州で制定されている。新しく制定されたFIT政策もあるが、既存の政策の改正が多く見られ、時に激しい議論や法的論争となった。RPS政策は18カ国と少なくとも53の地域で策定されており、2011~2012年はじめにかけて2カ国が新しく制定した。
 
他の分野の政策と比べ、冷暖房への自然エネルギー導入を推奨する政策の採用はいまだに少ないが、近年になり拡大している。2012年はじめまでに、少なくとも19カ国が自然エネルギーを利用した冷暖房の目標を決め、少なくとも17の国と州が自然エネルギー熱利用を促進するための規制・義務づけを行っている。多くの自治体が建築基準などで義務付けることによって冷暖房への自然エネルギー利用を支援している。この政策はまだほとんどが欧州で行われているが、他の地域にも関心が拡大している。
 
2012年はじめまでに、バイオ燃料の利用を促進するための政策は少なくとも46カ国と26の州で施行されている。2011年には3カ国が新しく規制を実施し、少なくとも6カ国が既存の規制を強化している。交通燃料税の免除やバイオ燃料製造の生産助成金は少なくとも19カ国で設けられている。またサトウキビの収穫量が低下したことなどから、ブラジルはエタノール混合の義務レベルを低減した。さらに、米国の長期的なエタノールの支援政策は2011年末に終了した。
 
世界全体で数千もの都市や自治体が自然エネルギー普及や気候変動緩和のための政策、計画、目標を策定している。2011年末までに世界の主要な都市の約3分の2が気候変動対策の活動計画を定め、そのうち2分の1以上は自然エネルギー利用を増やす計画を策定している。2011年には自然エネルギー普及を目的とした自治体間の協力を促進する機関の参加者が増え、活動が活発化した。その中には3,000以上の都市が参加する「EU市長誓約」(the EU Covenant of Mayors)も含まれる。ほとんどの活動は北米や欧州の都市で行われているが、中国には100のモデル都市があり、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、インド、メキシコ、南アフリカ、韓国などの都市も、自然エネルギー普及を促進する試みを2011年に開始した。
 
政策立案者は、エネルギー安全保障、輸入燃料への依存の低下、温室効果ガス排出量の削減、生物多様性の保護、健康増進、雇用創出、農村開発、エネルギー・アクセスの確保など、自然エネルギーの幅広い利点に近年ますます大きな関心を寄せている。いくつかの国では、他の経済分野の政策を自然エネルギー政策と統合して行っている。世界的に見て、自然エネルギー産業では500万人以上の雇用があり、雇用創出のポテンシャルの大きさは引き続き自然エネルギー政策推進の主要な原動力となっている。2011年には、日本の福島第一原子力発電所事故と、国連事務総長が2030年までにエネルギー・ミックスにおける自然エネルギーの割合を2倍にする目標を発表するという2つの大きな出来事が起こった。それにより、いくつかの国で自然エネルギー普及のための政策立案・実施が促された。
 
これまで政策の領域では、エネルギー効率化と自然エネルギーの関連づけはほとんどされてこなかったが、各国はこの相乗効果を活用することの重要さに気づきはじめている。エネルギー効率化と自然エネルギーは、持続可能な未来の「二本柱」と考えることができる。エネルギーサービスの効率を改善することは一次エネルギー源の種類によらず有効であるが、エネルギー効率化と自然エネルギーには特別な相乗効果がある。エネルギーサービスの効率が高くなるにつれて、自然エネルギーはより早く効率的で重要なエネルギー源になることができる。また自然エネルギー由来のエネルギーを使うほど、同じエネルギーサービスを提供するための他の一次エネルギーの需要が低下する。EUや米国など、各国はこの2つを関連させるように目標や政策を策定しはじめており、世界的にも国連事務総長が「すべての人のための持続可能なエネルギー・イニシアティブ(Sustainable Energy for All)」でエネルギー・アクセスの確保、エネルギー効率改善、自然エネルギー普及の関連性を強調している。自然エネルギーシステムの効率化に取り組む政策も出てきている。

■ 投資のトレンド

2011年に自然エネルギーへの投資額は17%増加し、2,570億ドルを記録した。これは2004年の投資額の6倍以上であり、世界金融危機の影響が大きくなる前の2007年の投資額からはほぼ2倍にあたる。自然エネルギー設備のコストが急速に低下している一方で、先進国において経済成長の可能性や政策の優先順位付けが不明瞭であるという状況のもとで、この増加は起こった。大型水力を含めれば、自然エネルギー発電設備への全体の投資額が化石燃料発電設備への投資額より400億ドルほど高かった。
 
2011年の注目すべき動きの一つは、太陽光発電への投資額の増加である。太陽光発電への投資は、近年最も大きな投資分野であった風力発電への投資額を超えた(ただし新規容量は、風力発電の方が太陽光発電より大きかった)。もう一つ注目すべき点は、米国の自然エネルギーへの投資が2010年と比べ57%増加したことである。この増加は、終了期限が近づいていた政府の支援政策を活用しようとプロジェクト開発者が殺到したために起こった。
 
総投資額の上位5カ国は、3年連続で他の国々をリードした中国、そのすぐ後に続く米国、他にドイツ、イタリア、インドである。インドは世界の主要な自然エネルギー市場の中で最も急速に投資が成長しており、62%の増加をみせた。発展途上国では過去数年間は投資が安定的に増加していたが、2011年は世界全体での投資額に占める割合が低下した。2011年に先進国の新規投資が1,680億ドルだったのに比べ、発展途上国の投資は890億ドルであった。


■ 農村地域における自然エネルギー:特別な焦点

自然エネルギーのビジネスやファイナンス・モデルの進歩とともに、重要な技術革新やコスト低下によって、発展途上国の人々やコミュニティへのクリーンで手頃な自然エネルギーによる問題解決策が次々と生まれている。隔絶された地域の大多数のユーザーにとっては、分散型で系統独立型の自然エネルギーによる発電を行う方が送電網を拡大するよりも安価である。同時に、発展途上国は系統連系型の自然エネルギーをますます増やしはじめているので、市場の拡大や価格の低減が進み、農村地域向けの自然エネルギー開発の見通しが良くなる可能性がある。
 
発展途上国の農村地域向けの自然エネルギー市場は地域によって大きく異なっている。例えば、アフリカでは近代的なエネルギー・サービスへのアクセスが非常に少ないが、アジアでは国によって大きな差があり、ラテンアメリカの電化率は非常に高い。さらに、この分野で活動している主体は数多く、参入する地域によって異なっている。農村地域向けの自然エネルギー市場は非常にダイナミックで、継続的に発展している一方、構造化された枠組みも整備された情報もないという困難にも直面している。
 
技術やシステムに焦点を当てることに加えて、多くの発展途上国は、農村地域の自然エネルギー市場を形作っている現在の仕組みを改善するプログラムや政策を見定め、実施しはじめている。多くの国々で、系統独立型の自然エネルギーの選択肢や自然エネルギーのミニグリッドを含む電化のための目標を策定しており、系統連系型の自然エネルギー発電の利用もある。農村地域の調理や暖房の市場では、自然エネルギーを使う改良型調理ストーブが、伝統的バイオマス調理ストーブに対する持続可能で信頼性のある代案として拡大している。これらの開発により、潜在的な投資者にとって、農村地域向けの自然エネルギー市場や開発経済の魅力は増している。
 
長年にわたって、自然エネルギーに関する政治、技術、ファイナンス、産業、それに関連する開発などは相対的に発展が遅れていた。しかし、その後の劇的な自然エネルギー技術の普及や大幅なコストの低下は、将来に向けて明るい見通しを示している。ただし、それを実現するためにはさらなる努力が不可欠である。国際エネルギー機関は、農村地域のエネルギー分野への年間投資を5倍に増やさなければ、2030年までにすべての人に近代的なエネルギーへのアクセスを提供することはできないと予想している。

■ 2011年の市場・産業のハイライトとトレンド

□ 風力発電
2011年に風力発電容量は20%増加して年末までに約238GWとなり、自然エネルギー技術のなかで新規発電容量が最大であった。2010年同様、発展途上国や新興国の市場が先進国(OECD諸国)の新規発電容量を上回った。中国は2010年と比べ新規発電容量がやや低下したが、世界市場のほぼ44%を占め、米国とインドが続いた。ドイツは引き続き欧州で最大の市場であった。市場占有率は比較的小さいままだが、より大きなタービンを使い、より深く海岸から離れた海域を開発することで、洋上風力発電は拡大している。個別の風力発電プロジェクトの大規模化や風力タービンの大型化の傾向が続いているが、一方でいくつかの国々ではコミュニティによる風力発電事業への関心が高まっている。

□ 太陽光発電(PV)

太陽光発電市場は、2011年も異例の成長を遂げた。新規容量はほぼ30GWであり、世界全体での総容量は74%増加してほぼ70GWとなった。大規模な地上設置型太陽光事業のトレンドが続く一方、住宅屋根用や小規模な太陽光パネルも引き続き重要な役割を果たした。また、太陽光発電の新規容量はEUで他のエネルギー技術を超え、初めて首位に立った。イタリアとドイツを中心として、欧州は2011年も引き続き国際市場で主要な地位を占めたが、他の地域でも市場が拡大している。また、中国は急速にアジアの市場で優勢となった。2011年は消費者や設置事業者にとっては良い年であったが、製造者にとっては、余剰在庫の保有、価格の下落、政府支援の削減、年間を通した市場成長の減速、著しい産業統合のため、製造利益を上げるどころか存続することも難しい年であった。モジュール生産がアジアに移動し続けている事が欧州企業の主な損害となった。

□ バイオマス発電/熱/交通利用

バイオマスの電力、熱、交通燃料への利用が増加したため、近年バイオマス燃料の国際取引が増加している。木質ペレット、バイオディーゼル、そしてエタノールが国際的に取引されている主要なバイオマス燃料である。固体バイオマスならびにバイオガスは、引き続き自然エネルギー由来の熱利用の多くを占めている。とくにバイオマスが地域熱供給システムでますます利用されている欧州において市場が急速に拡大している。もうひとつのトレンドは、同じく欧州を中心に広まっているバイオメタンガス(精製されたバイオガス)の利用である。バイオメタンガスは天然ガスの供給網に直接投入でき、熱や電力を生産したり交通燃料として利用することができる。中国、インドなどでは、家庭用規模の発酵槽バイオガスの調理への利用が広がっており、暖房や照明で利用されることもある。
 
バイオマスの発電容量は2010年はほぼ66GWだったが、2011年末にはおよそ72GWに増加した。アメリカがバイオマスの発電では世界をけん引しており、そのほかにはEUやブラジル、中国、インド、日本が主要な国である。砂糖を生産するアフリカ諸国の多くでバガス(サトウキビの搾りかす)による熱電併給プラント(CHP)を利用した熱とエネルギーの生産が行われている。過去10年ほどの間にバイオマスの収集、輸送、保存などの物流が発展したこと、そしてとくにペレットの世界的な貿易の拡大によってプラントの大きさの制約が取り除かれたことにより、いくつかの国においては設備の大規模化が進んでいる。
 
運輸部門における主要な自然エネルギー燃料はエタノールとバイオディーゼルである。2011年のエタノール生産はここ十数年で初めて停滞もしくは若干減少したが、バイオディーゼルの生産は世界的に継続して増加している。いくつかの航空会社がバイオ燃料を混合した燃料を使用した商業フライトを行うことを発表しており、生産量が比較的小さいにも関わらず、先進的なバイオ燃料への関心は高まり続けている。総量は限られてはいるが、増加傾向にあるガス体のバイオ燃料(主にバイオメタン)がとくに欧州においては鉄道やバスや他の交通機関に用いられている。

□ 太陽熱温水/暖房

太陽熱利用システムは2011年に導入量が27%(推計)増加し、合計で232GWthになった。(プール用の非ガラス管式システムを除く)。太陽熱温水設備の設置では中国が引き続き世界をけん引し、2位の欧州を大きく引き離した。ほとんどの太陽熱利用システムは温水用に利用されているが、とくに欧州では太陽熱暖房/冷房が普及してきている。2011年は北部地中海諸国の経済状況が悪化し、欧州の大半の地域でも悲観的な見通しとなっていることから、一部の太陽熱産業にとって厳しい年となった。世界の太陽熱温水システム産業はここ数年間と同様に中国が独占し、中国製品の輸出量は著しく増加している。

□ 集光型太陽熱発電(CSP)

2011年の集光型太陽熱発電の新規導入量は450MWを超え、世界全体でおよそ1,760MWに到達した。スペインが新規導入の大部分を占めたが、いくつかの途上国が新規導入を行ったこともあり、集光型太陽熱発電産業の活動範囲はスペインとアメリカから新たな地域にまで拡大した。トラフ式太陽熱発電が継続して市場を独占しているが、新たにタワー式およびフレネル式システムが2011年に稼働し、他にも建設中のものがあった。太陽光パネル価格が急激に下落したこととアラブの春によって中東と北アフリカでの成長が落ち込んだため、集光型太陽熱発電は厳しい状況に置かれた。ただし2011年末までにかなり大規模な設備が着工されてもいる。

□ 地熱発電/熱利用

2011年に地熱エネルギーは205TWh(736PJ)(推計)を供給したが、そのうち3分の1は電気(容量としてはおよそ11.2GW)として供給され、残りの3分の2は熱として供給された。2011年には、少なくとも78カ国が地熱エネルギーを直接利用した。大部分の直接利用における増加は暖房/冷房を供給できる地中熱源ヒートポンプ(GHP)によるものであり、その年間平均成長率は20%であった。2011年に地熱発電はあまり拡大しなかったが、これまでの市場に加え、東アフリカやその他の地域における新しい市場での動きにより普及割合は今後加速すると思われる。
 
地熱発電の拡大は新しい資源開発に特有のリスクの高さと認識の不足に阻害されている一方で、バイナリー発電や水の注入などによる強化地熱システムのように、資源の利用範囲を拡大したり、既存設備の経済性を向上させる新技術の開発によって成長している面もある。

□ 水力発電

2011年におよそ25GWが新たに導入され、世界全体の導入量は2.7%増加し、合計で970GW(推計)になった。水力は引き続き他の自然エネルギーよりも多く発電し、2011年は3,400TWh(推計)の発電をした。新規プロジェクトはアジアにおいて最も活発であったが、より成熟した市場では既存施設に出力や効率を向上させる改造を行うことに焦点を当てた。揚水発電の増加も含めて、水力発電はますます需給調整の役割を担うようになっている。これには、発電量が変動する太陽光や風力の増加に対応するという役割もある。企業は2011年の売上げの増加を報告しており、大規模な製造業者は新規プラントへの投資を行ったり、小規模の企業を買収することによって数十億ドル相当の残高を処理している。

□ 海洋エネルギー

数年前は小規模の実験的な事業開発のみだったが、2011年の世界の海洋エネルギー市場はほぼ2倍になった。韓国での254MWの潮力発電の新規導入とスペインにおける0.3MWの波力発電の導入により世界全体の導入量は527MWに到達した。2011年には小規模な試験規模と実用規模プラントの研究開発が行われた。これらは近い将来の商業化に向けてあらゆる技術を試し実証するために計画されたものである。数年後の大規模な普及に向けて、いくつかの有望な波力や潮力技術のために継続的な投資と戦略的な提携があわせて進められている。

■ 主要指標


注:表中には概算値を示している。
※1 投資データはBloomberg New Energy Financeから引用した。ここでは発電容量が1MW以上のすべてのバイオマス、地熱、風力発電、1~50MW規模の水力発電、小規模プロジェクトや小規模分散型として別途推計された1MW以下のプロジェクトも含むすべての太陽光発電、海洋発電全般、そして年間100万リットル以上の生産規模のバイオ燃料事業を含んでいる。
※2 水力発電データと、水力発電を含む再生可能エネルギー容量は過去の本報告書と比べて相対的に低い値となっている。これは純粋な揚水発電の設備容量は水力発電データに含んでいないためである。詳細については、英語版p.167のNote on Reporting and Accountingを参照のこと。
※3 太陽熱のデータには、温水プール用の非ガラス管式の容量を除いたガラス管式システムの容量に基づいている。
※4 固定価格買取制度とRPS制度のそれぞれの合計値は2011年と2012年初期を含んだものである。
※5 2010年、2011年のバイオ燃料政策は、Table.3(自然エネルギー補助政策)に示されているバイオ燃料規制に関する項目と、Table.R14(州/地域/国内で採用されているバイオ燃料の配合義務)に示されるデータを含んでいる。一方で、2009年の値には後者しか含まれていない。


■ 2012年の上位5カ国

□ 2011年の新規導入量/生産量

□ 2011年末の総容量


注:順位は投資額、発電容量、バイオ燃料生産量の絶対量に基づいている。自然エネルギー発電設備容量、太陽光発電、太陽熱温水/暖房の国民一人あたりの容量の国別順位でみられるように、一人当たりの数値では多くのカテゴリーで順位が大きく異なることが分かる。設備容量(GW)よりも発電量(TWh)を考慮した場合、水力発電の国別順位は変動する。これはいくつかの国ではベースロードの供給を水力発電に依存しているが、その他の国では電力需要に追従したり、ピーク対応をさせているためである。
1 太陽熱温水/暖房は2010年のデータであり、温水プール用の非ガラス管式の容量を除いたガラス管式システムの容量に基づいている。
2 国民一人あたりの自然エネルギー容量の国別順位は、水力発電を含まない総導入容量の上位7カ国間で順位付けられている。
3 いくつかの国では、地中熱ヒートポンプが地熱の直接利用容量の大部分を占めている。熱利用の割合がヒートポンプ容量の割合よりも低くなるのはいくつかの国では比較的稼働率が低くなるような要因があるためである。国別順位は2010年のデータに基づいている。


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