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2011年7月29日(金)
環境エネルギー政策研究所 ニュース

FIT法案の審議プロセス 4


FIT法案の審議プロセス報告

自然エネルギーの普及に向けて審議内容が注目される再生可能エネルギー買取法案(FIT法案)について、7月14日から衆議院本会議での審議、15日から衆議院経済産業委員会における議論が始まっています。ISEPではこの審議プロセスを追い、皆様に状況を共有し必要なアクションを取っていきます。27日には審議2日目を迎えました。27日の審議は7時間にも及んでいますので要点のみをまとめお送りします。

 

1-1.「負担論」のみの言及

昨日の午前の審議では民主党楠田大蔵議員、柴橋正直議員、自民党の西野あきら議員、望月義夫議員が、午後は自民党近藤三津江議員、公明党稲津久議員、自民党橘慶一郎議員、共産党吉井英勝議員、みんなの党山内康一議員が質疑を行い、合計で7時間にも及んだ。しかしながら、7時間の審議を通して本来の目的である「再生可能エネルギーの普及」に関する議論は1分もなかったと言っても過言ではない。

 
議員の多くが口にしたのは前回も触れている「負担論」であり、国民負担の増大や企業の負担に関する議論のみである。民主党楠田議員、自民党西野議員、望月議員、近藤議員の質疑および海江田大臣と中山政務官の答弁からも「負担」という言葉が度々聞かれ、再生可能エネルギーの普及による価格低減効果および電力料金の引き下げ効果などのメリットには全く言及がなかった。その上、化石燃料輸入代金の増大(全量買取制度は最大で150円から200円程度(経産省試算)や原子力の様々なコストなど、各エネルギーのコストをテーブルに置いた上でしっかり議論すべきである。例えば、化石燃料はこの数ヶ月で東京電力管内では標準的な家庭で400円程度の値上げがあった。(普及の観点から価格について質問したのは公明党の稲津議員のみであった。)
 

1-2. 賦課金0.5円/kWhのキャップを既成事実化

負担論の観点から近日問題になっているのは賦課金(サーチャージ)に0.5円/kWhのキャップをかけるという話である。昨日の委員会でも負担論を述べた議員や大臣、政務官から言及が相次いだ。0.5円/kWhというキャップをかければ再生可能エネルギーの普及は4%増にとどまり、27日のプレスリリースで書いた通りとなる。賦課金に対して0.5円/kWhのキャップをかけるという話は今までの経産省の審議会では出ていなかったが、14日の本会議、その翌日の経済産業委員会において突如出てきた。その後、関連する発言が相次いでおり、今回の委員会ではさらに既成事実化が進んでしまっている。
 
自民党の西野議員、近藤議員からキャップを法律に明記すべきだとの発言があった。それに対し、海江田大臣が0.5円/kWhのキャップについて法文化する予定はないと答弁があり、また別の議員に対して細野資源エネルギー庁長官から0.5円は目安という発言があった。
 
以下は自民党議員近藤議員と海江田大臣とのやりとりである。
 
近藤:「賦課金・サーチャージが0.5円にするという明確な答弁をいただきました。賦課金が1kWhあたり0.5円を超えないようにということは、法案のどこに明記されているか。」
 
海江田:「法案の条文には明記していない。私が本会議で答弁しました0.5円という金額は、午前中の答弁で申し上げたが、この新しい制度の導入によって、私のところでもやろうという方々の意欲を持ってもらわなければいけないということ。これが一つ。それからもう一つは、これを負担するとりわけ家庭の方々の負担の問題。これを仮に1kWhあたり0.5円とすると標準的な家庭で250円くらい。そういう負担の問題。それから家庭と違って大量に電気を消費する産業がある。この産業の競争力というか、産業が国内で生産活動を続け、そうしてつくった製品が競争力を有するので、それぞれに配慮してそれぞれに痛み分けできるかなという数字であるので確定的に条文に書くという必要はないのではないだろうかと考えてございます。」
 
これに対して、近藤議員が法律に定めるべきだと強く主張し、海江田大臣は「そういう主張があったことを脳裏に刻む」と返しています。近藤議員が「国民負担という大事な問題だ。脳裏に刻むだけではなく、ぜひ実行に移してほしい」として、この質問は終わっている。


1-3. 国産製品を重視するべきという発言

国産品の自然エネルギー発電機器を使うべきだという主張は、民主党柴橋議員、自民党望月議員、および中山政務官の発言に聞かれた。
 
例えば、民主党の柴橋議員は「政府は全量買取制度を導入することによって再生可能エネルギー関連産業が10兆円規模になると試算していますが、経済産業省の全量買取制度に関するプロジェクトチームでは、ドイツなどの再生可能エネルギーの急激に進んだ国では中国などの安価な製品が入ってきてしまい、必ずしも国内産業の成長に資するとはなっていないとしています。単に再生可能エネルギーの導入だけでは中国がどんどん利益を得て、国富がどんどん流れてしまう」と語っている。
 

2. 執筆者コメント

・ 7時間の審議を通して本来の目的である「再生可能エネルギーの普及」に関する議論は全く見られなかった点はこれ自体が暴挙だと言わざるを得ない。

 
・負担論については、近藤議員は質問で「菅首相が再エネの割合を20%とするということだが、その場合、賦課金は単純計算で2.5円/kWhになる」とも述べており、0.5円/kWhの場合には4%しか再エネが伸びないことを織り込み済みでこの質問を行っている。近藤議員に関しては先日の本会議でも負担論の立場から質疑を行っており、その中で質問は自然エネルギーが4%しかのびないことを分かった上での「確信犯的」な質疑だと言わざるを得ない。
 
・こうした導入上限を定めることは前回の審議報告で示したように普及を阻害する結果となる。まして法律にそれを明記するのはナンセンスである。導入効果と負担については、中長期的なエネルギーコストの全体像を考えた上で、化石燃料価格の上昇傾向や再生可能エネルギー価格の低下傾向などを勘案した上で評価しなければならない。単に再生可能エネルギーが追加費用になると言うだけでは全く意味がない。
 
・国産品の重視について考えるべきは化石燃料輸入費が23兆円分(2008年)も海外に流出しているということである。すなわち、柴橋議員の後半部分の「国富がどんどん流れていって・・・」というのは既に化石燃料でおこっているといえる。再生可能エネルギーがこれに取って代われば、日本のメーカーも多い訳であるからむしろ海外への国富の流出は減ることになるであろう。加えて今まで日本の国内メーカーは他国の全量買取制度に頼っていた。ここでも槍玉に挙げられたのは中国や韓国だが、日本製品もそれらの国のFITの市場に参入してきた。ドイツなどの買取制度に対しては日本の製品が得たメリットは大きかった。国際市場でなんとか生き残ってきた日本メーカーの競争力がそこまで弱いとは言い切れない。そもそも割合としては現状よりも他国の製品が増えるかもしれないが、全体のパイを見た場合の国内メーカーの再生可能エネルギーの生産量はむしろ増えることが期待される。 
 
・これらの点を考慮すると、海外製品ばかりがこの買取制度による普及がされるという指摘はあたらないと考えられる。またむしろ海外企業との協力体制の構築なども視野に入れるべきである。
 
・この買取制度の議論の最中に原子力関連の問題の質問をした議員、あるいはそれですべての時間を使ってしまう議員が非常に多い。もちろん原子力損害賠償や事故処理は重要であるが、一方でまだ買取制度の本来の目的である「再生可能エネルギーの普及」に関して全く審議が行われていない。
 
・今後はこの全量買取制度に関係のない原子力のことに関しては別の機会に大いにやっていただいて結構なので、この買取制度が再生可能エネルギーのしっかりした普及をもたらす制度にできるように審議時間を確保すべきだ。
 
・2回目のFIT審議だが、本文で述べたように全くもって「再生可能エネルギーの普及」という観点から議論がなされていない。しかも7時間も議論しているのにも関わらずだ。また議場にいる議員が少ないと言うことからこの国会議員たちのやる気のなさとこの未曾有のエネルギー問題への危機感がないことを指摘せざるを得ない。今回は傍聴人が多いのにも関わらずこの体たらくは論外だ。一般の方にもしっかり審議を衆議院TVなどで確認していただき、この議員たちの振る舞いを是非いろいろなところで指摘していただきたいと思う。
 
(山下・道満)

3. 今後の予定

 

7月29日:経済産業委員会審議3日目
※傍聴に際しては、衆議院議員を通じて経済産業委員会委員長の許可を受ける必要があります。

 

4. 今後の予定

 

次回ニュースは本日の経済産業委員会での審議内容について、配信を予定しております。

 

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担当:山下・道満

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