Copy

2012年9月17日(月)
環境エネルギー政策研究所 プレスリリース

「革新的エネルギー・環境戦略」の決定に対して
〜 より明確に「原発ゼロ」の実現時期と道筋を示し、核燃料サイクルを断念して、
再生可能エネルギー・省エネルギー・気候変動対策の中長期目標の深堀を 〜


概要

国民の「少なくとも過半」(意見聴取会やパブコメ等では7~9割)が原発に依存しない「原発ゼロ」の社会を強く望んでいることが国民的議論により明らかになり、まさにその実現に向けた革新的エネルギー・環境戦略の策定が求められている。9月14日に開催されたエネルギー・環境会議(第14回)において示された「革新的エネルギー・環境戦略」で、第一の柱の「原発に依存しない社会の一日も早い実現」において「2030年代に原発稼働ゼロが可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と宣言したことは、これまでの原発依存のエネルギー政策からの方向転換として一定の評価ができる一方、核燃料サイクルの議論を先送りしたまま、明確に「原発ゼロ」の社会の実現時期やその実現方法を示していないことには大きな問題がある。

1. 事実上の原発ゼロである「現在」を出発点として、政治的・財務的・経済的・国民合意的に現実的な措置を出発点とする「道筋」を具体的に示す工程と法制度の策定により、原発のリスクを最小化することを目指すべきである

  1. 官邸前デモやパブリックコメントに代表される、大多数の国民が「原発ゼロ」を望む声と政府に対する不信を受け止めて、いったん2年程度の全原発停止(再稼働モラトリアム)を行うこと
  2. その間に、原発の安全性に関する抜本的な見直しと国民の信頼回復を行うこと
  3. 脱原発についてのルール化と国民的な熟議と合意を行うこと。とくに使用済み核燃料の総量規制と中長期(50〜100年程度)の乾式中間貯蔵の立地場所の合意
  • その「総量規制と乾式中間貯蔵の立地場所の合意」を前提に、次の「最終処分に関する合意」のステップに移る。
  • 5〜10年で国民的熟議を重ねて「最終処分に関する国民的合意」を得る
  1. 電力需給に問題なかったことを前提に、この2年程度の財務・経済面からの必要な措置を行うこと
  • その間に廃炉すべき原発の仕分けと国有化(時価での引き取り)。原発廃炉による債務超過に陥る電力会社から送配電網を国が時価で購入する
  • 電力会社による徹底的な経費節減努力を前提とする燃料費の国による補填(いったん貸し付けて中長期的に託送料などで回収)により、電力の安定供給維持と電気料金の過大な値上げを回避する
  • 国有化した東京電力は早期に3分割(送電、発売電、国直轄の福島事故原発)
  1. 2年後を目途に、発送電所有分離を含む新しい電力市場の創設

2. 特に「原子力に依存しない社会の実現に向けた3原則」は、いずれも原発のリスクを最小化する最低限の条件であるが、まったく不十分である。少なくとも以下の4つは必須といえる

  1. 原子力ムラから独立した原子力規制委員会人事の見直し
  2. 3つの事故調査委員会の答申や最新の知見を反映した安全基準の見直しとその再適用(バックフィット)
  3. 原子力事業者責任を前提とする原子力損害賠償制度の抜本的な見直し
  4. 「被害地元」の概念を具体化した広域自治体を巻き込んだ安全監視と緊急時対応の具体化と実質化

3. また、「原子力に依存しない社会の実現に向けた5つの政策」についても、すでに破綻している核燃料サイクル(高速原型炉もんじゅと六ヶ所再処理工場)を即時放棄し、使用済み核燃料の全量直接処分を前提とする「中長期の乾式中間貯蔵」へ大きく方向転換した上で、使用済み核燃料の総量抑制とその中長期の貯蔵場所について国民的な熟議を進めるべきである

その上で、第二の柱「グリーンエネルギー革命の実現」を省エネルギー・再生可能エネルギーの本格導入により加速化し、エネルギーシステムの抜本改革により第三の柱「エネルギーの安定供給」を着実に実現すべきである。
この時、もっとも重要なことは、過去失敗を重ねてきたエネルギー行政を抜本的に改廃し、意欲と専門性と経験のある人材を集めた「環境エネルギー庁」を環境省のもとに設置する。さらに、省エネルギーや再生可能エネルギーに対してはさらに深堀した政策目標を定め、気候変動対策目標についても中長期的に国際的な責務を果たすことにより、中長期的ビジョンに基づく持続可能な社会の実現を目指すべきである。


上記に基づき、以下に「革新的エネルギー環境戦略」に関するISEPからの提言を示す。


【ISEPからの提言】

2011 年3月11 日に、東日本を襲った巨大地震とそれに続く大津波の影響は、計り知れない被害をもたらした。なかでも東京電力福島第一原子力発電所は、巨大地震と大津波の影響で、全電源が失われた後に、冷却水の喪失から炉心溶融、そして大量の放射性物資の環境中への放出など、史上最悪の原子力災害という事態に陥り、今なお収束していない。放出された大量の有害な放射性物質は福島第一原発の周辺地域にとどまらず、広く東日本の広い範囲の土壌に沈着し、大気中の放射性物質は偏西風の影響などにより世界全体に拡散しており、海洋中に放出された放射性物質は太平洋全域に広がりつつある。

この深刻な原子力事故は複数の事故報告書での指摘にもあるとおり、これまでの日本の原子力・エネルギー政策とその実施過程での多くの過ちの結果であり、特に政官財が強固に結びついた「原子力ムラ」に代表される無責任体制が、いわゆる「安全神話」を作り出し、今回の重大事故に至った。その過程で地震や津波のリスクを無視した原発の建設および運転が各電力会社(沖縄電力は除く)で行われ、事業者からの自己申告に基づく安全審査だけで経済性を再優先して30年を超える長期間の運転を認めてきた。さらに高速増殖炉「もんじゅ」や六ヶ所村再処理工場などすでに破綻していた核燃料サイクルの各事業の実施を前提として、使用済み核燃料について非常にリスクの高い保管方法(使用済み核燃料プール)が各地で行われてきたが、その保管容量はすでに限界を迎えようとしている。

よって、これまでの原子力政策の過ちを真摯に反省し、国民の安全と安心を確保するには、現存する50基の原子炉の事故リスクを最小化するために2030年までの出来るだけ早期に原発比率をゼロとし、使用済み核燃料のこれ以上の発生を可能な限り止め、核燃料サイクルを即時中止する「ゼロシナリオ」が日本にとってただ唯一の選択肢である。かつその「ゼロシナリオ」の中でも可能な限り早期の脱原発が最も事故リスクを抑えることができるため、2020年までのできるだけ早い時期での具体的な脱原発(全原発の廃炉)の立法と工程の策定およびその確実な実施を求める。そして、核燃料サイクルを即時中止すると共に、直接処分を前提とした安全な乾式中間貯蔵のあり方などについて、早急な国民的な合意形成と、実施工程の策定、実施に向けた具体的な取り組みが必要である。

さらにこれまでの硬直的なエネルギー政策を根本的に見直し、原発の様な大規模電源に依存せず、電力・熱利用・輸送燃料を含む分散型へのエネルギー・システム全体の転換を実務的かつ中長期的な視点で目指すべきである。具体的にはエネルギー需要全体の根本的な見直しを行い、最終的なエネルギー需要を削減する省エネルギーを目標値を持って推進すると共に、集中型電源により失われてきた「発電ロス」を最小化し、エネルギー効率を最大化するための分散型の電熱併給システム(コジェネレーション)への転換、化石燃料の利用効率や再生可能エネルギーとの協調運転を可能とする高性能・高機能設備への更新、可変速揚水発電を含む水力発電の更新や最適化などを推進する。よって、2030年までの省エネルギーの政策目標としては、最終エネルギー需要で35%以上とし、省電力についても30%以上を目指す必要がある。これにより、温室効果ガスの排出量に大きな影響を与える一次エネルギー供給の量を2030年までに2010年比で4割程度(約40%)まで削減することができる。この様な適切な地球温暖化対策により温室効果ガス排出量についても2030年には40%以上の削減(1990年比)を目指すべきであり、日本としての国際的な気候変動対策への貢献として2020年においても温室効果ガス25%削減(1990年比)の目標は基本的に堅持すべきである。

再生可能エネルギー政策については、欧州の様に明確かつ十分に高い政策導入目標を設定し、その実現に向けた政策を立法して、着実に実施していく必要がある。「ゼロシナリオ」における2030年の導入量は発電量に対して35%だが、欧州各国ではすでに2020年の段階で30%を超える高い政策目標を掲げており、2030年の政策目標としては50%を超える目標が望ましい。実際には2030年までに30%の省電力が達成できる場合、再生可能エネルギーの総発電量は3900億kWh程度となり、「ゼロシナリオ」での再生可能エネルギー導入量の1割増し程度となり、総発電量に占める再生可能エネルギー比率50%以上は十分に実現可能な政策目標である。さらに長期的にはエネルギー安全保障(自給率)、化石燃料の限界や気候変動リスクを考慮して2050年頃までには電力・熱・輸送燃料を含む再生可能エネルギー比率を100%近くにすることも長期的な地域および国家のビジョンとして視野に入れるべきである。

再生可能エネルギーの本格的な導入拡大においては、電力セクターにおける送電網の中立・公正的な運用への組織変更(発送配電分離)や、卸電力の自由化と電力市場形成、電力小売全面自由化などがこれを後押しする。さらに、分散型の熱利用やコジェネレーションを導入し、地域分散型のエネルギー・システムへ転換することが必要である。輸送燃料については、都市計画や流通網など交通システム全体の根本的な見直しと共に、脱化石燃料への本格的な取り組みが求められる。2050年までの長期的なビジョンを睨み、少なくとも2030年頃までには石油に依存しない輸送・交通システムを確立している必要がある。

なお、この意見およびその理由に関する詳細は下記を参照。

【ISEPからの提言詳細】

1. 原子力政策の抜本見直し

テキストこれまでの原子力・エネルギー政策を根本から見直すにあたり、これまでの原発の大規模新設を前提とする既存の原子力・エネルギー政策路線は完全に非現実的であることを認識し、原子力・エネルギー政策を抜本的に見直すための立法と実施体制の構築が必要である。そのための提言を「3.11 後の原子力・エネルギー政策の方向性~二度と悲劇を繰り返さないための6戦略~」として2011年4月にすでに行っているが、その概略を以下に示す。

まず原発の重大事故を二度とおこしてはならないことを前提に原発のリスク回避を重視する必要がある。地震の影響については、全ての原発で地震の影響が懸念され、また周辺の断層についての懸念がある。そこで最低限、東日本大震災で被害を受けた原発の廃炉、東海地震震源域などに立地し特に地震の影響が懸念される原発の廃炉が必要である。また、今回の事故により、いったん事故があれば周辺地域への影響はこれまでの想定を遥かに超えることが判明した。その意味でも今後の新規立地は困難であり、かつ新増設は不可能である。なお、コスト等検証委員会でも報告されたとおり、原発はコストが安いという理由はすでに成り立たない。今回の事故では補償に多くの税金が使われた。コスト等を考える際に、損害賠償については、無限責任保険にせよ、基金による互助制度にせよ、原子力発電所を持つ会社が100%負担するしくみが不可欠である。果たしてそうした負担のもとで、原子力発電所を稼働させる事業者があるかどうかは疑問である。以上より今後の原子力政策としては以下の項目の実行が必要である。
 
  1. 原発新増設(建設中含む)と核燃料サイクル事業(もんじゅ、六ヶ所村再処理工場を含む)の即時凍結と乾式中間貯蔵と直接処分への移行
  2. 活断層などの地震影響、構造欠陥、老朽化、地震による損傷などを前提とした危険な原子炉の即時廃止
  3. 公正・中立な原子力規制機関による新安全基準の策定と厳格な運用
  4. 既存の閉鎖的なエネルギー政策機関(原子力委員会・資源エネルギー庁・総合資源エネルギー調査会など)の廃止と、環境視点で開かれたエネルギー政策機関の設置
  5. 発送配電分離による全国一体の送電会社の創設と小売・卸市場を含む電力市場の抜本的改革
  6. 自然エネルギー本格拡大と抜本的なエネルギー効率化、一次エネルギー供給および最終エネルギー消費の総量削減規制を新しいエネルギー政策の柱とし、政策目標を設定
  7. 気候変動政策・低炭素社会構築とエネルギー政策との相乗的な統合
  8. 原発国民投票等によるエネルギー・原子力政策に対する国民的な議論の実施
  9. 脱原発の時期を明確にした上での立法と工程の明確化による原子力政策への転換
 
さらに使用済み核燃料ついては、核燃料サイクルの全面的な見直しにより、以下の様な項目を考慮し、早急な対策を実施する必要がある。
 
  1. 原発および六ヶ所再処理工場の両方で、使用済み燃料が溢れかえっており、あと数年で使用済み核燃料プールは満杯になるため、早晩、行き詰まることを認識する。
  2. 核燃料サイクル、とくに六ヶ所再処理工場は現実に破綻しており、経済的にも環境的にも核リスク的にもこのまま廃炉に向かうことが妥当。
  3. 使用済み燃料プール自体が、危険な「剥き出しの原子炉」であることを認識する。
  4. 脱原発をするにしても残る使用済み燃料「貯蔵・処分」の問題を国民で共有する。
  5. こうした問題を直視せず、その場しのぎで目先の乾式貯蔵施設を作るのではなく、使用済み核燃料問題に、国民全員で向き合う好機とする。
 
さらに、核燃料サイクル政策の全面見直しにおいて、再処理を止めて直接処分とする場合、使用済み核燃料の乾式中間貯蔵がひとつのカギを握る。具体的には、以下の様な項目を実施する必要がある。
 
  1. 直面する危機回避:まずは、すべての原子力発電所サイトにおいて、水プールにある使用済み燃料を輸送可能な乾式貯蔵キャスクに移すことで、危険な「剥き出しの原子炉」になりかねない状態を改善する
  2. 国は、これまでの「国のウソ」(原発から核のゴミを持ち出す、再処理は生産工場など)を陳謝し、現実に基づく本音の議論を開始する。
  3. 核燃料サイクル凍結・脱原発依存を前提に、「使用済み核燃料の乾式中間貯蔵」を当面の「問題出口」として、最終的な処分方策(直接処理)を決定するまでの中長期的な貯蔵場所(50〜100年単位)について、国民的な議論に付す。
  • 現状の場所に置くか
  • どこか集中的に貯蔵するか。それはどこかの地方か、もしくは都市か。
  1. 脱原発を前提として今後の使用済み核燃料の総量抑制を、政府と電力会社との間で合意する。
 
直面する原子力政策の混乱と危機に対して、「今、ここにある危機」に焦点を当てて、利害や見方が対立でもつれ合った糸をほどき、さまざまな関係者の間でも、合意可能と思われる処方箋を以下に提言する(詳細はISEP「3.11後のエネルギー戦略ペーパーNo.5~原子力版船中八策」参照)。
 

【提言項目「原子力版船中八策】

  1. 東電国有化〜「ワースト・バッド・グッド3分割」で原発事故処理・損害賠償・安定供給の同時達成を
  2. 再稼働問題〜「安全・安心・安定供給」の同時達成を
  3. 使用済み燃料乾式中間貯蔵による「原子力ニューディール」
  4. 核燃料サイクルの凍結・廃止(もんじゅ・再処理凍結・プルサーマル)
  5. 脱原発依存と使用済み燃料の総量規制
  6. 原子力安全規制と原子力損害賠償見直し
  7. 原子力国有化と今後の廃炉措置
  8. 低線量・内部被曝問題〜「安全デマ」と「過剰不安」を越えて

2. 省エネルギー(エネルギー効率化)

電気と熱、運輸のエネルギー消費の削減量を、機器の更新を中心に手堅く見積もると、2030年度に一次エネルギー供給について2010年度比で約4割(39%)の削減が可能になる。最終エネルギー消費については全体で36%削減が見込まれる。熱利用だけでも16%、運輸燃料だけでも11%削減が見込まれる(表2-1)。

表2-1:エネルギー全体の削減比率


省エネ対策の予測について、対策別に限定的に列記して計算されることが多い。この方法は確実な効果を予測したい時の方法だが、これでは多くの対策の余地を見落としてしまう。例えば熱利用における排熱回収対策、電気ではインバータ化や台数制御、不用機器の削減などの対策余地を落とし、2011年夏の節電経験も見込めず、過小見積もりになる。そこで、各業種でどの製造・サービスで付加価値を高めるのかを列記してその和が各サービス業に生産台数予測と付加価値の増加あるいは減少を求めて和をとり、細目の予測のつかないものは成長しないものとみなすことはせず、おおまかな率をかけて判断する。省エネ法においても毎年1%効率改善の努力目標があり、また中期的な目標である「ベンチマーク指標」があり、いずれも「率」で効率改善を予測している。こうした現実的な予測手法に基づき、省エネ余地を評価することが必要である。

そこで、現状で商業化された技術あるいはその改良で得られる技術を、更新などの機会をとらえ、全ての発電所・工場・事業所に普及させることを原則とする。工場については、排熱回収や機器のインバータ化などの改良回収技術が更新だけでは見込めない。そこで、既に上げられている目標や、省エネ改修工事の例を参考に、省エネ対策後の水準を推定する。

(1) 火力発電所の発電ロスについて

火力発電所は日本で最大のエネルギーロスであり、この対策が最大の省エネ対策である。対策の一つは発電の高効率化である。LNG火力についてはコンバインド化でガスタービン入口温度を高めることで、高位発熱量で見て発電効率54%のものが商業化され、技術的にはコスト等検証委員会で検討された発電効率57%のものが見込まれる。

2030年には、旧型LNG火力の置き換えにより、「モノジェネ」(発電のみで排熱利用なし)のLNG火力発電所のストック効率が54%に達していると見ることができ、投入エネルギーを22%削減できる。温暖化対策によるガスシフトとあわせ、LNG割合が増えれば火力全体のストック効率も向上する。もうひとつはコジェネと排熱利用である。日本では排熱利用が限定的、とりわけ事業用発電で排熱利用が少ない。2030年にむけて政策的に増やすことが考えられる。発電ロスは最終消費部門の電力消費削減とあわせて大きく改善することが見込まれる。

(2)産業部門

産業部門の中でも素材製造業の鉄鋼、化学、セメント、製紙などの工場では、エネルギー消費のメインとなる高炉やキルン、各種加工設備、自家発電や産業用蒸気設備などで多くの省エネ機器や断熱、排熱回収技術を組み合わせて対策が行われる。

工場では、改修の時期に商業化された省エネ技術を駆使し、全工場が省エネトップランナーになることが求められる。トップレベルではないが、手がかりとして経済産業省が省エネルギー政策の一環として、「ベンチマーク」を設定している。機器別積み上げでなく排熱回収利用などを判断するのに、生産量あたりのエネルギー消費量やCO2排出量で判断するのは妥当といえる。中期的に目指すレベルであり、しかも事業所別トップランナーでなく、事業者別で平均値より標準偏差分だけ上のレベルである。2030年は最低でもこの水準をストック効率で達成すると予測するのが妥当である。経済産業省は、これらの業種ごとにベンチマーク指標に基づく現状の業種平均値を公表し、業種ごとにベンチマークを達成した場合の削減率を試算可能にすべきである。

リサイクル材の利用割合を増加させると、エネルギー消費が減少する。鉄鋼の場合には、高炉の鉄と電炉の鉄を比較すると、表1.2のように普通鋼ではエネルギー原単位に約4倍の格差がある。日本にある膨大な鉄のストックを有効利用し、建設材や、一部機械用などで電炉利用の拡大を計画的に進めると、電気をやや増やすものの鉄鋼業のエネルギー消費を大きく減らすことができる。例えば、鉄鋼生産のうち高炉割合を75%から50%に減らすと、鉄鋼業のエネルギー消費は23%減少する。

製造業のうち非素材を中心に、省エネ対策事業、ESCO事業が取り組まれている。設備更新だけでなく、生産設備の熱回収や設備のインバータ化や台数制御導入、不用設備撤去、各種運用で大きな削減が見込まれる。製造業では従業員むけの一般空調や照明などのユーティリティ設備もあり、業務なみの省エネが見込まれる。これらにより、全体のエネルギー効率の20%改善は無理なく実現できると考えられる。

3. 再生可能エネルギーの本格的導入と電力システム改革

テキスト再生可能エネルギーの実現可能性について、現在指摘されている様々な課題は将来に向けて十分に解決が可能であり、その膨大な導入ポテンシャルから地球環境問題だけではなく、日本にとってエネルギー安全保障の面からもエネルギー自給率を高める最も有力な手段となる。さらに技術開発や経済効果の面でもグリーン成長の切り札となり、地域経済や一次産業との相乗効果など多くの導入メリットが期待される。一方、火力の化石燃料コストは今後上がる一方であり、気候変動に対する制約も大きい。さらに、原発に関する導入および使用の制約条件は非常に厳しくなっており、将来に向けては再生可能エネルギーがもっとも導入可能性そして利用可能性の高いエネルギー源と言うことができる。結局、化石燃料の輸入は、海外メジャーと商社くらいにしか利益にならないが、それを減らして省エネや再生可能エネルギーに投資すればお金が国内で循環し、雇用も増え、市場経済で勝負する国内製造業の活性化、ものづくりの国の復活にも寄与する。
 

(1)世界の再生可能エネルギーの急成長

風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーが、今、世界的に急成長している。再生可能エネルギーの市場に関するUNEP(国連環境計画)の最新レポートによると、世界の再生可能エネルギー市場の規模は2011年には2500億ドルを超え、成長を続けている(図3-1)。そのうち日本は90億ドルで約4%の市場シェアとなっているが、現状では日本の市場のほとんどが住宅用太陽光発電である。
 

図3-1:世界の再生可能エネルギー市場の推移


世界の再生可能エネルギーは、電力、熱、交通など全ての分野で大きく増加し続けている。REN21が毎年発行している「自然エネルギー世界白書2012」によると、2011年時点の世界の最終エネルギー消費に対する再生可能エネルギー供給の割合は約17%(推計)になっており、このうち水力発電が3.3%、再生可能エネルギーの熱利用が3.3%、発電が0.9%、バイオ燃料が0.7%であるが、現状でも薪などの伝統的バイオマスが約8.5%を占めている。全世界の発電量に占める再生可能エネルギーの割合としては水力発電が15%で、水力発電以外の再生可能エネルギーは約5%となっており、合計するとすでに20%を超えている(図3-2)。
 

図3-2:世界の再生可能エネルギーの割合


日本は、世界の自然エネルギーの趨勢の中で、太陽光発電など一部の分野除き、先進各国の後塵を拝している。例えば、図3-3に示す世界各国の風力発電の累積導入状況では、先行していた欧州のドイツやスペインに対して、この数年で米国や中国の導入量が急速に増加していることがわかる。特に中国はこの5年間の間に急激とも言える風力発電の導入により、2010年に米国を抜いて世界1位になり、2011年末の累積導入量が6373万kWに達している。これに対して日本の導入量は少しずつ増加しているものの、2011年末で250万kWに留まり、その差は実に25倍に達する。

日本がその技術開発で先行していた太陽光発電についても、近年、欧州各国での導入が進み、ドイツとの比較では、2005年以降、大きく引き離されている(図3-4)。特に2010年にドイツは年間740万kWを導入したが、2011年にも750万kWを導入し、太陽光発電の累積導入量は2011年末に2500万kW近くに達している。これは日本の累積導入量490万kW(推計)の実に5倍以上に達するが、国内の全発電量の規模から考えると10倍の導入量に相当する。

図3-3:風力発電の累積導入亮の各国推移(データ:GWEC、作成:ISEP)


図3-4:日本とドイツの太陽光発電の導入量の推移(作成:ISEP)


(2)日本国内での導入ポテンシャル

日本国内での再生可能エネルギーの本格導入の実現可能性については、これまでの環境省および経産省などにおける導入ポテンシャル(エネルギーの採取・利用に関する種々の制約要因による設置の可否を考慮したもの)に関する調査検討結果を踏まえる必要がある。しかしながら、日本を地域別にみた再生可能エネルギーの導入ポテンシャル(将来、導入が可能な発電設備の容量)は非常に大きいことが分かっている。例えば、2011年4月に発表された環境省の「平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」では、太陽光発電(住宅用以外)、小水力発電そして風力発電について国内全域の導入ポテンシャルを推計している。太陽光発電については、工場やビルなどの屋根の上に太陽光パネルを取り付ける他、遊休地など様々な未利用の土地が日本全国で活用できることが示されている。小水力については、水資源の豊富な全国の山間地域において導入が可能であり、その導入可能量は1400万kWと推計されている。風力発電については、従来から導入が進められてきた陸上について、特に東北地域や北海道において導入ポテンシャルが大きく、その導入可能量は、2億7300万kWと推計されている。さらに現在、技術開発が世界中で進んでいる洋上風力については北海道を中心とした地域で導入ポテンシャルが大きく、導入可能量は1億4100万kWと推計され、陸上とあわせた導入可能量は4億kWを超えている。これは、日本国内に現在ある発電設備の全設備容量を遥かに上回る量である。

さらに、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルについてはエネルギー・環境会議のコスト等検証委員会報告書(2011年12月19日)で、経産省や環境省などで調査結果が整理されている。それによると太陽光発電の導入ポテンシャルは住宅用で6500万kW、非住宅用で1億5000万kW程度まである。風力発電については陸上風力で2億8000万kW程度、洋上風力に至っては15億kW程度の導入ポテンシャルがあることがわかっている。さらに中小水力が2000万kW、地熱発電が1400万kW(温泉熱発電を含む)となっている。

地域別の導入ポテンシャルを風力発電について見てみると、北海道や東北そして九州に多くのポテンシャルがあることが、JWPA(日本風力発電協会)による調査でもわかっている。特に北海道では現在導入されている全ての発電設備(火力や原子力を含む)に対して、30倍もの導入ポテンシャルがあるという調査結果となっているが、その豊富な再生可能エネルギーによる電力を、エネルギー需要の大きい他の地域へ送る為のインフラ(送電系統など)が課題となっている。その中で、陸上での導入に加えて洋上での風力発電の導入も期待されており、日本国内でも技術開発や実証試験が始まっている。

さらに日本国内には、世界第三位の地熱資源による地熱発電や地熱利用の大きな可能性がある。産業技術総合研究所が2008年度に行った地熱資源量の評価結果では、大規模な蒸気を利用した地熱発電の導入可能量が約2300万kWあった。これは現在の設備容量の40倍以上に達する。さらに日本には高温のため利用されていない温泉のエネルギーがあり、それを発電に活用する温泉熱発電(バイナリー発電)の導入可能量は約700万kWあると推計されている。
 

(3)経済性の評価

再生可能エネルギーの経済的な実現可能性の評価としてその発電コストがポイントになる。発電コストの考え方は「エネルギーシナリオ市民評価パネル」が2011年10月に「発電の費用に関する評価報告書」を発表している。従来の原子力発電や化石燃料の発電コストは、様々な外部費用や将来の燃料費高騰などの制約条件が考慮されておらず、その導入コストや運用・維持コストはさらに大幅な上昇が想定される。一方、再生可能エネルギーは、これまでの世界での急速な導入拡大と共に、そのコストは着実に低下してきており、国家戦略室のコスト等算定委員会の試算でも近い将来には逆転をするとされている。太陽光発電、風力発電などは導入量が増えるにしたがって、学習・経験曲線あるいは大規模化によるコストダウンを将来的に見込むことができる。すでに日本国内においても導入が進んでいる住宅用太陽光発電については、コストダウンが加速しており、メガソーラーや風力発電についても、海外での事例と同様のコストダウンが期待できる。コスト等検証委員会の試算では2030年には、再生可能エネルギー発電コストは他の電源と同じレベルになるとされているが、世界の趨勢をみれば、これは前倒しが十分に可能である。また、バイオマス発電以外の再生可能エネルギーでは燃料調達が原則として不要であることから、20年を超える長期間の運転(設備更新を伴う)を想定すれば、その発電コストはさらに下げることができる。すでに世界の再生可能エネルギー市場は急成長の段階に入っており、市場の拡大に伴う波及効果はすでに明確である。

再生可能エネルギーの導入コストは、大量導入によりコストが下がり、世界中で普及したFIT制度が市場価格になるまでの橋渡し役を果たしている。再生可能エネルギーのシェアが上がり、単価が下がれば導入に伴う負担も下がる。しかし、この負担は裏返せば、今後上がる一方の化石燃料コスト負担の影響を緩和するための投資でもある。今後化石燃料依存を続ければ、海外へ流出する実質的な国民負担が増える一方である。すでに燃料費調整制度による電気料金の値上がりは1年間でkWhあたり2円程度に達しており、将来はさらに上昇する可能性が高い。再生可能エネルギー導入に伴う固定価格買取制度でのサーチャージの試算は、環境省の「2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会」の「エネルギー供給WG」でも詳細な検討が行われており、2030年頃をピークに、kWhあたり2円程度のサーチャージが想定されており、化石燃料による影響に比べて十分に低いレベルとなる。

さらに、再生可能エネルギーの本格導入に伴う経済的な影響については、設備投資などに伴う費用と便益を評価することが重要であり、固定価格買取制度など市場メカニズムを活用した施策が十分に効果があることが欧州などで証明されている。再生可能エネルギーの便益としての①温室効果ガスの削減②エネルギー自給率の向上③化石燃料削減④産業活性化⑤雇用の創出などを勘案すれば、その費用を固定価格買取制度を通じて電気料金の賦課金とすることは十分に合理的な施策であり、市場を活用した資金の調達や設備投資が実現可能である。電気料金への影響についても、現在の燃料費調整制度が上限としている5円/kWhを下回る賦課金で2030年までの長期的な制度の運用が可能と考えられる。しかも、将来の化石燃料の上昇を考えれば、回避可能原価の上昇に伴い、再生可能エネルギーの導入により電気料金の上昇を抑制する効果を持つと考えられる。

(4)送電網等の電力システムの課題

再生可能エネルギーによる発電を本格的に導入した際、送電網など電力システムに関する課題についても十分に解決が可能である。既にスペイン等の欧州の国では再生可能エネルギーが30%近く入っても、気象予測などをもとに、最大時間帯で50%以上を風力が占める状況においても調整電源なども活用し、広域での系統制御を実現している。日本においては、一定出力の運転しかできない原発のためにこれまで2500万kW以上も導入されてきた揚水発電も調整電源として活用できる。さらに出力抑制や広域での系統制御を行うことにより、蓄電池のようにコストばかりかかる方法に固執する必要は無い。

詳しい分析は、環境省の「2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会」の「エネルギー供給WG」でも詳細な評価・検討が行われている。その結果、再生可能エネルギーとして太陽光発電および風力発電を大量に導入した際の送電網への影響については、合理的な費用の範囲で対策を行うことが可能である。太陽光発電と風力発電が大規模に導入された2030年の高位ケース(再生可能エネルギー35%)でも、地域ブロック別・1時間レベルの需給バランスに対する調整能力を考慮した試算が行われている。この場合、広域の系統運用でカバーできない局面では、需要の能動化、揚水発電の利用、出力抑制の順で対策を実施することを想定している。火力発電などバックアップ電源による調整も必要になるが、上記の対策と組み合わせることにより、既存の設備を活用した合理的な範囲での運転が可能と考える。2030年までの系統対策費用の試算では高位ケースで合計5.1兆円(2690億円/年)となり、十分に合理的な設備投資の範囲に収まると考えられる。
 

(5)再生可能エネルギーの政策目標

再生可能エネルギー導入の実現性については、すでに日本よりも10年先行している欧州の導入実績および政策、今後の政策目標について参考にすべきである。日本が1990年から2010年にかけて再生可能エネルギーの電力の割合をほとんど増やさず、寧ろ減少させているのに対し、EU各国では2000年以降、着実に再生可能エネルギーの導入量を増やしている。ドイツ、スペイン、英国においては2000年からの2010年の10年間で再生可能エネルギーによる発電量を約3倍に増やしている。さらにEUでは2020年までの再生可能エネルギーの導入目標を最終エネルギー消費の20%と定め、さらに国別の導入計画(NREPA: National Renewable Energy Action Plan)を策定している。図3-5には発電量に占める再生可能エネルギーの国別の実績と、2020年までの政策目標を以下の図に示すが、EU各国は2020年までに35%を超える再生可能エネルギーの導入目標を掲げており、日本の2030年の再生可能エネルギーによる電力供給の目標として35%はむしろ最低限のレベルと言え、省電力の30%達成を前提とすれば、欧州各国が2030年までに目指すであろう50%以上の目標を掲げるべきである。さらに2050年頃までに再生可能エネルギー100%の達成を長期的なビジョンとする場合には、2030年に50%以上の再生可能エネルギー比率を目指すことが必要である。

図3-5:国別の再生可能エネルギーによる電力の比率と政策目標(IEA, EUデータよりISEP調べ)



■ このプレスリリースに関するお問い合わせ

特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)

E-mail: info01@isep.or.jp

URL: http://www.isep.or.jp/

TEL: 03-6382-6061

FAX: 03-6382-6062 

Copyright © 特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所, All rights reserved.
Email Marketing Powered by Mailchimp
メール配信の登録解除 | 登録内容の変更  |
メールが正しく表示されない場合はWebブラウザーでご覧下さい。