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2011年8月1日(月)
環境エネルギー政策研究所 ニュース

FIT法案の審議プロセス 5


FIT法案の審議プロセス報告

 

自然エネルギーの普及に向けて審議内容が注目される再生可能エネルギー買取法案(FIT法案)について、7月14日から衆議院本会議での審議、15日から衆議院経済産業委員会における議論が始まっています。ISEPではこの審議プロセスを追い、皆様に状況を共有し必要なアクションを取っていきます。29日は第三回衆議院経済産業委員会があり、午前に参考人質疑、午後は通常の法案審議を行いました。

1. 参考人意見陳述の要旨

<電気事業連合会 八木 誠 氏>
(1) 負担においては国民各層の理解が重要であることで、国は円滑に導入を行うために周知・理解活動を行う必要である
(2) 買取価格において太陽光は段階的に買取価格下げ、それ以外は一律価格
(3) 制度の見直しについてで、産業界負担との関連やグリーンイノベーションに資するかどうかを見極める必要である
(4) 電気事業法に関しては再生可能エネルギーのネットワーク利用を円滑化するために透明性や公平性を電力系統利用協議会によって監視等が行われているが、一般電気事業者や特定規模電気事業者に加え再生可能エネルギー発電者も対象に加える
(5) 系統安定化については周波数や電圧を維持する世界最先端の系統制御システムの開発を進めるべきである

 
<日本経済団体連合会 進藤 孝生 氏>
(1) エネルギー多消費産業を始め六重苦(法人税、円高、環境対策、労働対策、通商政策の遅れに加え、今回の電気料金の引き上げ)による国際競争力低下の懸念がある。
(2) 政策による電気料金値上げは復興に加え、産業に大きな悪影響を与えるため現段階に導入すべきでない
(3) 議論の順序が逆で、エネルギー基本計画の見直しをもとに再生可能エネルギーの位置づけを決めるべきで、また他の原発に今回の教訓を生かした上でエネルギーミックスを実現すべき
(4) 再生可能エネルギーには高コストで、制約条件が多いのでそれを開かれた国民的な議論をすべきである。また国会で負担条件を決めるべきである
(5) 原子力発電の停止による化石燃料の増加および全量買取制度の導入によって電炉業は87億5800億円(すなわち経常利益の9.4%)が喪失するためドイツのような軽減措置をお願いしたい
 
<一橋大学 山内 弘隆 氏>
(1) 細かい議論が出てきてしまうため、費用負担や買取価格に例外を作るべきではなく一律でやるべきである(太陽光以外)
(2) 相対的な公費の負担は競争やイノベーションによって価格を下げ、需給のミスマッチをスマートグリッドなどの技術開発によって克服し、環境価値を国民的な試算としていくべきである
(3) それらを電力利用者に求める根拠は一般財源の逼迫、長期的な視点での政策の安定性、広く一般的に負担がされることである
(4) 不公平感の解消、国民への広報活動、政策が見える化することが必要である
 
<立命館大学 大島 堅一 氏>
(1) そもそも固定価格買取制度は永続的な負担ではなく、再生可能エネルギー事業のリスクを減らし、競争力を持たせる制度である
(2) 日本は再生可能エネルギー分野、特に風力発電などで後塵に拝している
(3) 再生可能エネルギーの導入において重要なのは、再生可能エネルギー導入量の法文化、電源種ごとのコストベースでの買取、国会での価格決定、優先接続・優先給電、電力多消費産業および低所得者への減免である
(4) 低所得者への減免措置は電気料金の第一段階部分で減免措置を行うことによって、低所得者に対するリスクは回避できる

1-2. 参考人に対する質疑
参考人に対して、民主党櫛渕議員、自民党谷畑議員、公明党稲津議員、共産党吉井議員、みんなの党の山内議員が質疑を行いました。項目ごとにどの議員がどのような質問したか分類してまとめています。

<買取価格について>

櫛渕議員・稲津議員

買取価格の決め方および国会の関与について両議員から質疑があった。櫛渕議員は山内参考人および大島参考人に対して、稲津議員は八木参考人に対してであったが、「(再生可能エネルギー普及の観点から)国会で決めていく」(大島参考人)、「(国民負担を伴うことから)透明性が高いところで決めるべき」(八木参考人)とあり、この決め方については再生可能エネルギー普及、負担論両方の観点からも国会などの関与が必要だとした。

<国民負担・軽減措置>

谷畑議員・吉井議員・山内議員
産業界の負担軽減に関して、谷畑議員は山内参考人に対して、山内議員は大島参考人に対してドイツの減免措置について質疑を行っている。大島参考人は「ドイツでは鉄道と1000万kWh以上の産業について減免措置がある」と答弁した。国内の産業界の現状(特に電炉業)については吉井議員および山内議員が進藤参考人に対して質疑を行っている。国民の負担軽減に関しては山内議員が大島参考人に対して質疑を行っている。(内容は前期の通り)

<エネルギー別コスト>

櫛渕議員・稲津議員・吉井議員

櫛渕議員からはこの数ヶ月で化石燃料の燃料費調整制度で239円増加した、あるいは化石燃料の輸入額を23兆円に増加したことについて八木参考人、進藤参考人に対して質疑があった。稲津議員から進藤参考人に対して同種の質問があった。

吉井議員は大島参考人に対して各電源のコスト試算についての質疑があった。大島参考人からは、経産省の試算が各電源の前提が違い比較可能なものではなく、有価証券報告書や財政資料から実績値を見ると原子力は10.68円、火力が9.9円、水力が7.26円(揚水含む)、一般水力のみだと3.8円であるという発言があった。

<優先接続・優先給電>

櫛渕議員・吉井議員・山内議員

櫛渕議員が八木参考人に対して、吉井議員が大島参考人に対して、山内議員が大島参考人および八木参考人に対して質疑を行った。大島参考人はドイツの例では必ず接続をしなければならず(吉井議員に対して)、拒めるのは系統増強が間に合わないとのみ(山内議員に対して)だという趣旨を述べている。一方で八木参考人は電力の安定供給に一定の条件を課すべきだ(山内議員に対して)と述べている。

<系統安定化対策>

櫛渕議員・谷畑議員

櫛渕議員からは八木参考人に対して接続を拒める場合および系統運用ルールについての質疑があった。八木参考人は「系統につないだときに電子機器などに悪影響を与えないように対策をすることと系統への接続費用を支払うことが条件になる。そうした場合も公平性や透明性が重要で第三者中立的な期間である系統利用協議会によって説明をしていく」と述べている。

谷畑議員からは再生可能エネルギーの不安定性について大島参考人に質疑があった。大島参考人からは面的に見れば再生可能エネルギーはコントロール可能であるが、日本の9分割された体制で連携線も使わなければ不安定にならざるを得ないと語っている。

<エネルギー基本計画について>

谷畑議員・稲津議員

谷畑議員がエネルギー基本計画の見通しについて全参考人に対して、稲津議員が再生可能エネルギーの位置づけを山内参考人と大島参考人に対して質疑を行った。八木参考人は「原子力は重要でありベストミックスを追求する」、進藤参考人は「再生可能エネルギーがベースの電源にはなり得ず、化石燃料しかない」、山内参考人は「再生可能エネルギーが代替するとはしない」(以上谷畑議員に対して)と述べ、一方で大島参考人は「国産であり、災害に強く、事故などの大きな被害のない再生可能エネルギーの普及は賢明なものである」(稲津議員に対して)と述べた。

<FITの海外動向>

吉井議員・山内議員

吉井議員と山内議員が大島参考人に対して、他国での再生可能エネルギーの普及および全量買取制度について質疑を行った。大島参考人からは、世界では風力が倍々ゲームで増えて中国が1位となったこと、FIT導入国が主流となっていること、あるいはドイツの事例(再生可能エネルギーの所管が経済省から環境省に移ったことや風力の立地を土地利用計画に落とし込んで社会化することなど)が述べられた。

<発送電分離・電力自由化>

稲津議員・山内議員

稲津議員は八木参考人、山内参考人に対して、山内議員は進藤参考人に対して質疑があった。八木参考人は「電力系統安定化のためには火力と蓄電池による需給調整が必要であり、そのためには発送一貫がよい」と発言があった。また山内参考人からは、再生可能エネルギーの普及には競争とコスト低減が重要で発送電分離がすぐに結びつくわけではないとした。


2-1. 午後の審議のまとめ
午後の審議は自民党の赤澤議員、中谷議員、民主党の白石議員が質疑を行っている。まず、赤澤議員の質疑は半分近くが内閣不一致と海江田大臣の退陣時期を問いただす質問であり、与野党のヤジが飛び交った。その後赤澤議員の質問は中山間地や農山漁村におけて地域振興の夢を語れるような再生可能エネルギー普及に向けた買取価格の設定を行うべきだと言う質疑があった。中山政務官が国民負担の観点から問題があると言う従来通りの答弁を行っている。また赤澤議員から買取価格の設定において、こうした再生可能エネルギー発電を行う地域住民らの意見も聞くために経済産業大臣に加えて他省庁の農業水産大臣、国土交通大臣および環境大臣と協議するという文言を法案に加えるべきだと発言があった。同様の発言が中谷議員からもあった。価格設定に関しては中谷議員からは既存のバイオマス発電施設が不利益にならないようにすべきだという質疑もあった。なお中谷議員からは原発の再稼働をすべきだと何度も言及があった。一方で民主党の白石議員からは10点ほど細かな論点を中心に質疑があった。主なものとして規制改革・許認可について、高品質電気消費産業への配慮について、太陽光発電機の廃棄物処理についてなどであった。

2-2. 午後の質疑に対しての執筆者コメント

赤澤議員の政局を煽るような質疑は重要法案である全量買取制度の審議時間が限られている中で、無駄な時間を使っただけに過ぎない。実際に彼は筒井農水副大臣に対する質疑の時間が取れていないと言った問題を生んでしまっている。この全量買取制度法案が再生可能エネルギー普及に資する制度になるように審議すべきである。一方で午前中の参考人質疑に続き、委員会の中でようやく普及と言った観点から発言が増えてきた。経済産業省が進めようとしている一律価格をしっかりしたコストベースによる買取に変更すべきである。これを委員会の中でしっかり方向付けるべきだ。


(執筆者:山下・道満)

3. 今後の予定

次回の委員会日程はまだ未定

※傍聴に際しては、衆議院議員を通じて経済産業委員会委員長の許可を受ける必要があります。


4. 今後の予定

次回ニュースは第四回の経済産業委員会での審議内容についての配信を予定しております。


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担当:山下・道満

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担当 山下・道満・氏家
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